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「摩擦力」を自在に操る!
~エンジン一つで走って草刈る乗用草刈機~

2019.01.15
  • #力のつりあい
  • #摩擦力

エンジンやモーターの回転力を離れた場所に伝えるのに,プーリーとVベルトで構成される伝動装置を使います.二本のシャフト(駆動側と従動側の回転軸)にそれぞれプーリーを取り付けて,Vベルトでつなげば回転力を伝えることができます.

写真7

Vベルトで従動側プーリーが回転するのは,その接触面に摩擦力が働くからです.Vベルトはゴム製で,その断面は台形のクサビ状になっており接触面積の大きさとクサビ作用により摩擦力を確保しています.プーリーは外周にV字型の溝が設けられた円盤で,その溝にかけられたVベルトにより回転します.この摩擦力には以下の法則が成り立ちます.

F = μN
F:摩擦力 μ:摩擦係数 N:抗力

            
ここに,Fが摩擦力,Nは接触面に垂直に働く力(抗力)です. μは接触する二つの面の材質や粗さなどの面性状で決まる摩擦係数であり,Vベルト(ゴム)とプーリー(金属)の場合にはおよそ0.75で一定です.したがって,抗力Nを変化させると摩擦力Fの大きさがコントロールできます.
ORECの乗用草刈機では,この摩擦力の法則を使った工夫をして,1つのエンジンの力を「走る力」と「草を刈る力」の両方に使い,それを制御しています.それには草刈刃を動かすプーリーのほかにテンションプーリーというもう一つのプーリーを使います.そして,テンションプーリーの位置をVベルトの垂直方向にずらすことによってVベルトに加わる張力(=抗力N)を制御しています.草を刈る場合は抗力を最大,草刈刃を止める場合は抗力を0というように摩擦力を自在に変えることで草刈刃の回転をコントロールしているのです.

写真8

写真5

((株)OREC 松尾謙介)

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