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分子をたくさん繋げて利用する
タンパク質の様な形をした糸
~高分子ナイロン~

2019.01.15
  • #化学反応
  • #化学結合
  • #有機化合物

「もふもふ」な犬や猫,冷たい手触りの爬虫類,そして肌が露出している「ヒト」まで,動物の外観はいろいろですが,いずれもケラチンというタンパク質が形づくっています.皆さんも良く知っている三大栄養素の一つであるタンパク質の基本構造は,20種類のアミノ酸が何度も結合を繰り返すことによって一次構造と呼ばれる細長い糸状の構造を形成して作られています.この結合はペプチド結合と呼ばれます.天然繊維として知られる羊毛や絹はタンパク繊維ともいわれ,この結合から成ることから,皆さんが身に付けている衣服の原料となる化学繊維を作るときにも,名は違えども同じ形の結合が利用され(化学的にはアミド結合という),工学的な手法を用いて生産されています.また,蜘蛛が作るクモ糸もタンパク繊維の一種で最近では人工的に生産する技術の開発が進められています.
代表的な化学繊維であるナイロンを紹介します.ナイロンは二種類の薬剤を混ぜ合わせ化学反応させることによって作られます.具体的には,「アミン」と呼ばれる物質と「カルボン酸」と呼ばれる物質がアミド結合を通して交互に繋がっています.ナイロンは化学の専門用語でポリアミドと呼ばれる高分子(ポリマー)で,常法では十分に反応が進まないため,界面重合法というユニークな方法を用いて作られます.

スライド1

界面重合法とは水相と油相の境目(界面)で化学反応を起こして「もの」を生産する方法です.ナイロン生産の原料となるヘキサメチレンジアミン(アミン)のアルカリ水溶液とアジピン酸ジクロリド(カルボン酸)の有機溶液(油)の2種類の薬液は水と油なので直接混ざって化学反応することはありません.しかしながら,その境目(界面)を反応場として工学的に利用することにより,界面で化学反応を起こして化学繊維ナイロンを形成させることができるようになります.界面に形成されたナイロンを引き上げると新たに界面が形成されて化学反応が起こり,原料が供給される限りナイロンが連続的に生産され続けます.

写真1

2相に分離した薬液と界面に生成したナイロンの巻取(津田, 中嶌, 辻, 渡邊, 大岡, 工学教育, vol.53-6, p.58-62 (2005)より)


(久留米高専生物応用化学科 栫隆彦,渡邊勝宏)

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