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燃やしてわかる塩分濃度
~原子吸光光度法による
イオン濃度の分析~

2021.01.15
  • #ランベルト・ベールの法則
  • #化学反応と光
  • #原子吸光光度法
  • #塩
  • #炎色反応

みなさんは,海水の塩分濃度がどのくらいか知っていますか?場所にもよりますが,3.1~3.8 %程度と言われています.
塩分と聞いてまず思い浮かぶのは,おそらく塩化ナトリウム (NaCl) だと思います.海水には,この他に塩化マグネシウム (MgCl2) 等が,下図に示す割合で含まれます.

燃やしてわかる塩分濃度①

では,どうすれば海水中の塩分の種類や濃度を調べることができるのでしょうか?海水に限らず,液体を燃やして塩分 (金属イオン) の濃度を調べる「原子吸光光度法」という方法があります.聞きなれないと思いますが,まずは化学の授業で学習した炎色反応を思い出して下さい.炎色反応とは,金属が燃えるとき,その金属特有の色の光を発する現象です.この現象を利用して金属イオンの濃度を測る「炎光光度法」が発明されましたが,測定精度や装置の規模の問題で,広く普及しませんでした.
一方で,19世紀に,「金属原子を燃やした時に発する蒸気は,その金属原子特有の波長の光を吸収し,吸収の度合いは蒸気に含まれる金属イオンの濃度により決まる」という法則 (ランベルト・ベールの法則) が発見されました.「原子吸光光度法」は,この現象と法則を利用し,金属イオン溶液を燃やした際に発生する蒸気に光を当て,溶液中のイオン濃度を測定する方法です.

燃やしてわかる塩分濃度②この方法で,ほとんどの種類の金属イオン濃度を測定できます.吸収される光の波長は,炎色反応と同じように金属イオンの種類によって決まるので,各々のイオンを測定する専用のランプが必要です.
液体だけでなく,土に含まれる金属イオンの濃度も測定できます.蒸留水と土を混ぜて十分に振とう (溶液を振って揺らすこと) して土粒子に付着する金属イオンを蒸留水に溶かし,ろ過した液体のイオン濃度を測ればよいのです.これにより,土の中の肥料濃度,土壌塩類化の程度や,下図に示す六価クロムや鉛等の重金属に汚染された地盤の汚染の程度を測定することができます.

燃やしてわかる塩分濃度③

(九州大学 古川全太郎)

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