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環境を浄化する夢の光触媒
~光のエネルギーで抗ウイルス,
殺菌,防かび~

2019.01.15
  • #還元
  • #酸化
  • #酸化物

酸化チタン光触媒は1960年代後半に日本人により発見され,防汚,防曇,殺菌,防かびなどの様々な機能を発揮する製品に応用開発されています.その反応機構は,酸化チタン光触媒に紫外線が照射されると,光を吸収してその内部で電子が励起され,同時に正孔が生成します(図1).

写真2
図1 酸化チタン光触媒の反応イメージ図

生成した電子は,空気中の酸素と反応して何段階かの経路を経て過酸化水素が生成します.一方,正孔は,非常に高い酸化作用を有しており,光触媒表面に吸着した有害化学物質,ウイルス,菌,カビなどのあらゆるものを酸化してCO2に変換します(図2).

写真3
図2 酸化チタン光触媒の電子と正孔の反応性を表すエネルギーダイヤグラム

また,正孔は光触媒表面に吸着した空気中の水分と反応して表面の水酸基(OH基)を増加させ,その表面はやや疎水性から超親水性へと性質を変化させます(図3).この機能を利用して,曇らない鏡(カーブミラー)などが実用化されています(図4)

写真4
図3 酸化チタン光触媒の超親水性機能発現の反応機構(東京理科大学I部化学研究部 2013 年度春輪講書)

写真5
図4 光触媒コート処理したカーブミラーと未処理のカーブミラーの曇り方の違い(積水樹脂HPより)

この酸化力と超親水性の2つの機能は,太陽光の中に含まれる紫外光のエネルギーを利用して汚れを分解する外壁⽤の塗料,ガラス等に応用開発され,世界中で利用されています(図5).

写真6
図5 光触媒塗料で処理した外壁と未施工の外壁の防汚性の違い((株)ピアレックステクノロジーズHPより)

(九州工業大学 横野照尚)

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