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花火の原理で鉄をみる
~スカイツリーを検査する~

2019.03.18
  • #元素
  • #光
  • #原子
  • #電子のエネルギー準位

スライド1

東京のシンボルになりつつある東京スカイツリーを始め,日常生活のいたるところに鉄の姿を見ることができます.
身近に使用される鉄は純鉄ではなく炭素,リン,硫黄,窒素,マンガンなど多種類の元素が入っています.求められる特性を持つ高品質な鉄を作る過程では,この混ざっている元素の濃度をねらった値に調整することがとても重要となります.では,どのように濃度を確認するのでしょうか?
高校物理では,光子の波長λとエネルギーEとの関係式を次のように習います.
λ = hc / E
この式のEは,光などのエネルギーを吸収して不安定な励起状態にある電子が安定な基底状態の配置へ戻るときに放出される光子のエネルギーで,それぞれ固有の電子配置を持つ元素の種類によって異なります.プランク定数hと光速cは元素によらず一定ですので,花火のように反応した金属の種類が異なれば,出てくる光子の波長が変わり,人の目には花火の色が変わって見えます.
鉄を燃やすと中に溶けている元素の種類や濃度によって出てくる光の色(波長)は変わります.そこで,鉄をグループ毎に燃やして出てきた光の波長を分析装置の目で見ることで,溶けている元素の種類や濃度を決定することができます.

図4

1666年にニュートン先生が発見したこの分析手法は「発光分光分析」と呼ばれ,350年以上経った現在でも,短時間で多くの元素を同時に分析できるため,社会で大量に必要とされる鉄やアルミニウムの高い品質を保証するために無くてはならないものになっています.


(久留米高専 材料システム工学科 佐々木大輔)

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