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電圧を測って温度を知る!?
~抵抗温度計とその応用~

2019.03.25
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  • #電気
  • #電気抵抗

理科の実験では液体の温度を棒状のアルコール温度計で測ります.では,街の気温計,車のインパネの温度計,エアコンのリモコン,体温計等々,至るところで目にする温度はどうやって測っているのでしょう.そこで使われているのは,金属や半導体の電気抵抗が温度によって変化する性質を用いたセンサです.
そのため,センサに電気を流して電圧Eと電流Iを測ります.そして,オームの法則E=IRより電気抵抗Rを求めます.予め電気抵抗と温度の関係がわかっていれば,その関係から温度が求められます.この原理を用いたものを抵抗温度計といい,白金フィラメントを用いた測温抵抗体やセラミック半導体を用いたサーミスタなどがそれに当ります.白金より安価なサーミスタはスマートフォンや様々な電子機器などの温度センサや過熱防止センサとしても広く用いられています.

図5
サーミスタ(村田製作所提供)

ただし,注意しなければならないことがあります.導電体に電気を流すと,電気抵抗により消費電力 の分だけ自己発熱してしまうので,厳密にはセンサの温度のほうが周囲の温度より高くなってしまいます.ですから,発熱による温度上昇が無視できるくらいの小さい電圧と電流で測定する必要があります.
しかし,意図的にセンサを発熱させてヒータとして使うこともできます.この場合,センサの温度が周囲よりどのくらい高くなるかは,センサから周囲への熱の伝わり具合の良し悪し,例えば,周囲の流体の熱伝導率(熱の伝わりやすさを表す性質)や流れなどに依存することになります.熱線風速計という風速を測る装置では,発熱が無視できるような微弱な電流で空気の温度を測ったうえで,加熱してセンサの温度を測ります.そして,予め求めておいた温度差と風速の関係から風速を求めます.ガスクロマトグラフィというガスの分析を行う装置のガス検出器にもこの原理を用いたセンサが使われています.

(九州大学 高松洋)

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