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食べ物の酸味から環境問題まで!
~「対数」で感じるpH計~

2018.04.09
  • #対数関数
  • #水素イオン濃度とpH

pHは、水溶液の酸性や塩基性の強弱の目安です。溶液の水素イオン濃度を[H+]としたとき、その常用対数をとると、−1から−14までの値になります。そこで、負の符号をつけて表します。

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対数は、遠洋航海や天文学で必要な、桁外れに大きい数の掛け算や割り算を足し算と引き算に直して、簡単に計算するために発明されました。アボガドロ数(NA, 6.02×1023)が基準になる濃度や物質量も、対数で表すと使い勝手が良くなります。また、マグニチュードやデシベルのように、対数で刻んだ単位で表します。次の表から、その理由が感じ取れるでしょう。

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さて、皆さんは、電池がまだ使えるかどうか調べたことはありませんか?いま、電圧計に2本の金属棒(探針)を繋いで、電池の+極と−極にあてたとします。残りの電圧が十分であれば、電池はまだ使えましたね。では、その状態で、探針の反対側を電圧計に繋がずに食塩水に浸したとしましょう。すると、電池から電流(電子の流れ)が導かれるので、食塩水中の水素イオンは、電子を受けとって水素ガスになります。
水素ガスは水にごくわずかしか溶けないので、大気中に逃げ出します。そこで、水素が生成する目安として、水素ガスの圧力を使うと、次の関係式が得られます。

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中括弧の内部は、標準状態を仮定したり、いくつかの近似を取り入れたりするとゼロになるので式が簡単になります。このような対数の関係式が、電気式のpHメータやイオン濃度計の作動原理として活躍しています。

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1滴でpHが測れる個人向けpH計.
先端の黒い部分にとりつけたガラス薄膜が、水素イオンにだけ応答して、他のイオンが共存しても正確にpHが測れるように工夫されている.
http://www.horiba.com/laquatwin/ja/index.html

(九州大学 中野幸二)

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