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弱い鉄から強い鋼に
自在に強さを変える!

2019.02.26
  • #元素
  • #原子
  • #金属結晶

自動車,橋,建物など私たちの身の回りには多くの鉄が使われています.もともとの純鉄は弱いものですが,工業製品に用いられる鉄(鋼)は,用途に応じて弱いものから強いものまで,その値は何倍も変化しています.どのようにして鉄の強さを自在に変えることができるのでしょうか?
物質を構成している結晶は,原子が規則正しく配列しています(格子).しかし,純鉄の結晶には配列が乱れた「転位」と呼ばれる部分があり,外力が加わると原子のつなぎ替えによって転位が動き,結果として塑性変形(外力を取り去っても残る変形)が起こります.強い鉄をつくるためには,この転位を動きにくくしてやればよいのです.

写真7

転位を制御するには,①鉄の格子の隙間に炭素などのより小さな原子を入れたり,鉄の原子をMnなどの大きな原子に置き換える,②より大きい析出物(異なる結晶構造の物質)を入れる,③熱処理(加熱により素材の性質を変化させる処理)により結晶格子を伸ばした部分に炭素などを多量に入れる,といった三通りの方法があり,鉄の強さを自在に変えることができます.現在では,鉄(鋼)の強さは純鉄の10倍にまで達しています.

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例えば,同じ鉄から出来ているように見える自動車のボディも,その強さを原子レベルで設計された多様な鉄が各パーツに使用されています.

スライド1

(新日鐵住金八幡製鐵所 内田和範)

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