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電波で食品を加熱する
~電子レンジの仕組み~

2019.07.01
  • #化学結合
  • #振動
  • #極性
  • #電磁波

私たちはいろいろな形で電波を利用しています.例えば,携帯電話では電波を用いて情報をやりとりしています.毎日の食事の調理に欠かせない電子レンジも電波を食品に照射して加熱しています.どのように食品は加熱されるのでしょうか.
電波は,光やX線と同じく電磁波と呼ばれる電界と磁界の振動現象です.電界と磁界は,進行方向に対して垂直に振動しながら進行しています.電磁波が1秒間に振動する回数を,電磁波の振動数といい,単位はHz(ヘルツ)を用いています.振動数が3×1011Hz以下の電磁波を一般に電波と呼びます.

写真8

電子レンジでは,振動数2.45×109Hzの電波が用いられており,1秒間に24億5千万回も電界や磁界が振動しています.食品には,水分が多く含まれています.水分子は水素原子と酸素原子が電子を共有して結合する際,酸素は電子を引きつける力が強いため,共有される電子は酸素に偏る傾向があります.このため酸素は負に帯電しており,水素は正に帯電しています.このように珍しく極性を持っている水分子は,電波が照射されると電界の変化に追従して激しく運動します.個々の水分子の運動と水分子間の相互作用(摩擦など)により熱が発生して,食品は加熱されます.なお,振動数は,おもに水が加熱されやすいこと,および製品(電子レンジ)として備えるべきさまざまな条件から決定されています.

図1

電子レンジの庫内は,ターンテーブル式とフラットテーブル式の2つがあります.ターンテーブル式の電子レンジは,電波の照射元が1箇所で固定され,電波は庫内で反射されて食品に届きますが,食品を回転させないと十分に加熱されない場所ができます.フラットテーブル式の場合は,電波の照射元自身を回転させ,また電波を乱反射して食品に電波をさまざまな方向から照射して均一に加熱するように工夫されています.

(熊本大学 藤吉孝則)

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