写真の建物は南米ペルーの首都リマで撮影されたものです.窓の周りを見てください.日本の建物と少し違っていませんか?実は,どの窓にも庇がありません!
日本の場合,庇は屋内へ差し込む夏の日差しの遮蔽(しゃへい)と雨除けを目的としています.でも赤道近くのリマ(南緯12°)では南からも北からも真上からの日差しとなりますので屋内に入ることはありません。加えて降水量も少ないので,窓に庇を設ける必要が無いのです.
次に日本の建物で考えてみましょう.ペルーより緯度のある日本(熊本で北緯33°)で太陽の恵みを活かして夏涼しく冬暖かく明るい家を建てる場合,暑い夏は庇で日差しを遮り,寒い冬は日差しを屋内に取り込むことが重要です.
そのためにも,建物南側の窓と庇の長さを上手にデザインする必要があります.太陽の高さ(=太陽高度)が最大になる夏至,最小になる冬至の南中時に合わせて,下図のように建物の庇の長さとガラス窓の高さが決められます.高校1年で習った三角比(tan33.78°=0.669,tan78.02°=4.713)を使って,熊本での図内のA〜Dを計算で求めてみましょう.
実は国内の多くの建物は,日本の伝統的な建築をモデルにしています.日本で昔から使われている伝統的な身体尺(=物差し,人体や人間の機能を基準とする単位)である1尺(=0.303m)で,庇の長さ(=A)を割ってみてください.太陽高度の違いでAの値が東京・京都・熊本で微妙に異なりますが,概ね1.9〜1.95尺になったと思います.つまり庇の長さが2尺なら日差しとの関係が上手くいくということです.実際,長さ2尺の庇は多くの場所でみられます.当時の物差しで建物を建てるとその土地の太陽の恵みを活かすことに繋がるかもしれないなんて,ワクワクしませんか?
このように地域の気候を活かす建築デザインを「バイオクライマティックデザイン」と言います. 興味がありましたら皆さんの身の回りのバイオクライマティックデザインを探してみてください.
(熊本大学 髙田眞人)
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