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金属を溶かしてくっつける!?
~身近な製品に使われている溶接の魅力~

2019.05.07
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街中では背の高いビルや鉄塔が建ち,電車が行き交い,多くの自動車が走っています.また海や川に近ければ大きな橋や船があります.これらの構造物や製品のほとんどは鋼やアルミといった金属でできています.素材メーカーが製造した単純な形状(板や棒など)の金属材料を加工し,それらをくっつけることによって種々のインフラや機械を作っています.2つ以上の金属部品の繋ぎ目を部分的に溶かしてくっつける方法が“溶接”です.

写真6

代表的な溶接方法の一例として“被覆アーク溶接法”を紹介します.溶接機(電源)には溶接ホルダとアースが接続されています.くっつけたい金属板をアースに接続し,溶接ホルダで溶接棒をつかみます.溶接棒先端を金属板に一旦接触(短絡:ショート)させてからわずかに引き離すと,板と溶接棒先端の空間内でわずかに存在する電子が気体分子と衝突し,気体がイオンと電子に分かれて導電性を持つ状態であるプラズマとなり,その中を電流が流れます.これをアーク放電といいます.プラズマは非常に高温で,この熱を利用して金属を溶かしてくっつけます.ところで溶接棒は心線(母材と同材質の細い棒)と心線表面に塗布された被覆材でできており,被覆材には溶接中にガスを発生させて,溶けている金属を大気中の酸素から保護し,酸化を防ぐ工夫がなされています.

写真7

溶接接合部は母材部分に比べて弱くなります.強い構造物を作るには強い素材を用いるだけでなく,強い接合部を作ることが不可欠です.溶接の諸問題を学問的に解決し,新たな技術を生み出すのが“溶接工学”です.

(九州工業大学 北村貴典)

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